第30章 求めているのは一つの作用
一斉に去って行った
女性たちの背中を見送りながら、
小さくため息が漏れる。
「凛、
巻き込んでしまってすまない。
やはり女性を怒らせると怖いな。」
謝意を示されているようだが、
エルヴィンの表情は柔らかく
その顔を見ていると、
こっちまで表情が緩んだ。
「本当だよ……
睨み殺されるかと思った。」
「なかなか適切な表現だな。
去り際の顔は、特に恐ろしかった。」
エルヴィンの肩を震わせて笑っている。
「笑いごとじゃないからね?
あそこは取り敢えず私のことを
恋人だって言って切り抜けた方が、
あんなにも反感を買わなかったと
思うんだけど。」
「いや。どんな場面であっても、
嘘は吐きたくない。」
エルヴィンの放った一言は、
全身の筋肉を硬くさせた。