第30章 求めているのは一つの作用
エルヴィンが何か話し出すのを察して、
女性たちに釣られて、
視線をエルヴィンに向ける。
「この女性は恋人ではないが、
俺の好きな人なんだ。」
エルヴィンが笑顔で言い放った一言で、
心臓が破裂したがっているのかと思う程
忙しなく動き始めた。
「だから俺は、
心身ともに彼女にしか興味がないんだよ。
デートをするのも、身体を重ねるのも
彼女以外とする気はない。
すまないが、他を当たってくれ。」
エルヴィンがそう言い切った時、
女性たちの痛いほど冷ややかな眼光が
自分に集中し、身体が小さく震える。
だが、それと同時に優しくエルヴィンに
背中を摩られ、その手のひらの暖かさのお蔭で、
凍てつくような寒さの雪山から
救われたような気分になった。