第3章 逸脱した世界
「……なるほど。
俺たちの歴史は、“この世”には存在していない、
ということか……」
男の顔を盗み見る。
少し表情が暗い。
そりゃそうだろう……
いつの間にかタイムスリップして、
ここに飛ばされた結果、
自分のいた世界が存在しないと言われて
ショックを受けない人なんていないだろう。
「……さっきも言いましたが、
もしかしたらあなたの居た世界の歴史は
まだ解明されていないだけなのかも
知れないです。
明白になっていない歴史は、
この世にまだたくさんありますし…」
どんな言葉を掛けたらいいのか分からず、
そこまで言ったところで言葉を止める。
今の自分が彼に何と声を掛けたとしても、
彼の戸惑いを和らげることなどできないだろう。