第3章 逸脱した世界
「それは何だ……?」
「……携帯のことですか?」
携帯電話は外国にも普及しているはずだが、
この人はそんなことも知らないのか?
「これは携帯電話って言って、
離れた場所にいる相手と、
会話ができる機械です。」
まさか携帯電話の説明をする羽目に
なるとは思わなかった。
男は目を丸くすると、
「離れた場所にいるのに、
この箱を持っているだけで会話ができるのか?
離れた場所、というのは、どのくらいの
距離までのことを言うんだ?」
そう言って驚いた表情をこっちに向ける。
……大の大人の男、
しかも綺麗な顔の白人男性が、
携帯電話の説明に興奮している。
なんだか可愛く思えてしまい、少し頬が緩んだ。