第18章 自然な願望
湯船に口元まで浸かり、長いため息を吐く。
泡の出現と同時に、色んな思いが頭を過った。
……こんな異常にエルヴィンのことを
意識してしまうのは、
範司の一言のせいもあるが、
今日一日を通して、エルヴィンの心に
深く触れた気がするからだ。
エルヴィンの暖かい手や、
穏やかな言葉が、今日一日だけでも
空っぽだった自分の心を、
かなり満たしてくれた。
死ぬ気でいた自分は、
今はどこを探しても見つかりそうにない。
そうさせてくれた相手に、
身体を許してもいい。
なんなら自ら許したい。
なんてことを思ってしまうのは、
自然の事の様にも思った。
それでもそれをしてしまうと、
エルヴィンが元の世界へ戻ることに
ますます寂しさを感じてしまう気がする。
二人がいなくなった後の“この世”に、
私は生きる希望を持てるのだろうか。