第13章 他人の空似
“掃除より大事なことがたくさんあるから、
掃除をする暇なんてない。”
というのが、範司のいつもの言い分だ。
掃除をしない言い訳にも聞こえるが、
範司は実際に、一瞬も自分で
片付けたことのない自室で勉強し、
こうしてかなり倍率の高い
大きな歴史博物館の学芸員として働いている。
そんな強い意志を持つ範司を、
少し羨ましくも思ったし、尊敬もしている。
……が、年を重ねるに連れ、
範司の変態的な要素が
かなり目立つようになった上、
私も仕事が忙しく、
最近は自然と疎遠になっていた。