第10章 奔放な我慢
「……エルヴィン?」
「すまなかった。
君にそんな顔をさせるつもりは
なかったんだ……」
エルヴィンの逞しい胸板に顔を伏せていると、
自分の心音がヤケにうるさく聞こえる。
引き離そうと思い立つが、
エルヴィンの鼓動も
早く刻まれていることに気付き、
胸を押しかけた手を降ろした。
「……エルヴィン。
本当にもう怒ってないよ?」
「本当にキスしそうになった。」
「なっ、何?!」
いきなり突飛な方向に話題を変えられ、
動揺を抑えきれずに
身体中の筋肉が強張ったのを感じる。
心拍数が限界値を超えている気がして、
とにかく大量の酸素を取り込もうと、
エルヴィンの胸元から顔を上げた。