第12章 迷子の迷子の…!
「次次~、はいそこの兄ちゃんな~」
緊張していたが、兵の様子があまりにもかったるそうで、こちらが緊張していたのは何だったんだと思うくらいだ。
椿は大きいキャリーバッグを持っていたが、それにはあまり触れずに通してもらえた。次はだ、変に手に汗をかき、ばれたらどうしようと顔がこわばってしまう。
だが伊達軍の兵を前にすると、やはり気の抜けた声が聞こえるのでふぅ、と肩の荷が下りたような気がする。
「…ん?姉ちゃん、これは?」
「…っ!」
しまった、とは息をのむ。懐にしまっておいた信玄からもらった短剣に気が付いてしまったようだった。
家紋まで読み取られる前にどうにか言い訳をしなければならない。どうする、どうすると考え、やっとの事で口を開いた。
「父上からいただきましたものでございます」
震えそうな声を腹筋に力を入れてとどまらせ、どうにか普段通りの声を出した。兵は怪しそうな顔をしないまま
「そうかぁ、じゃあ大切にしろよ!」
とそこから出してくれた。
ほっと一息吐き、椿に駆け寄った。
「どうなることかと…」
「…!!」
椿が察するよりも早く、は誰かに腕を掴まれていた。
は一瞬何が起こったのかわけがわからず、振り返るまでに時間がかかった。目の前の椿は鬼よりも怖い形相での後ろにいる人物をにらみつけている。
もその人物を確認するためにゆっくりと振り返った。
「あっ…!」
そこにはあのゆるい兵でもなく町民でもない人がいた。
人を鋭い刃で抉るような視線をこちらに向けているのは、
「政宗様がお待ちだ。」
片倉小十郎だった。