第12章 迷子の迷子の…!
「あー…椿ちゃん大丈夫かなぁ」
「ちょっと迷いすぎだな」
結構な時間を話しているはずなのにそれでも椿は戻ってこず、男も心配になってきたのか口元から笑みが消えていた。
「そういえばお兄さん、なんで笠かぶったまんまなんですか?顔見せたくないんですか?」
「俺みたいな顔はなぁ…見せたっていい事ねぇからさ」
ぽんぽん、と頭を撫でられてはふーん、とまた視線を前に戻した。
この男の手は信玄よりも小さく、幸村と同じか少し大きいくらいだとわかった。確かにこの男は幸村よりも身長は少しだけだが高かったような気がする。
「俺が探してきてやるよ、特徴を教えてくれ」
「えっと、歳は私と同じくらいで身長も私くらい…だったかな、真っ黒でつやのある髪の毛で目がくりくりした可愛い顔つきです」
「よし、待ってろよ」
男はそう言い残してのそばから離れて人ごみへとまぎれて行った。
男にも椿にも待ってろと言われ、ずっと待たされているは不安を通り越してぼーっとしていた。
このまま2人とも帰ってこなかったらどうしようとか、宿に帰るべきかなとか、色々考えていれば周りの煩い声も耳に入らず無心でいれた。
しばらくするとの呼ぶ声が聞こえ、顔を上げるとそこには肩を上げて大きく呼吸をしている椿がいた。見渡したがあの笠を深く被った男はおらず椿しかいなかった。
「あれ?男の人呼びに来なかった?」
「あ、来ました来ました、笠の男ですよね」
なんだか不機嫌そうで、何があったんだろうと聞こうとしたが、話が長くなる気がしたのでそれは宿に戻ってからにする。
椿から茶を受け取り一気に飲むほすと、ぷはあっと女っ気のない息が出て、椿に怒られてしまっただった。