第11章 自立しないと。
『…』
すべて吐き出し終わり、肩で息をしているとふと違う声が聞こえて画面を見ると、そこには担任教師の山内が写っていた。彼は新任教師で地理をもっており、教え方がうまいと評判の教師だ。
『先生は、すぐにでもの所に行って連れ戻したい。というより、そもそもトリップが何なのか根本的に理解できていないんだ』
「…です、よね」
だろうと思う。子供の遊びだろうとそう山内も思っているのかもしれない。
たとえ信じてくれなくても薫がいるから十分だと何も言おうとしなかったが、山内はどうやらそういう人種ではなかったらしい。
『でもが嘘をついているとは思えない。さっき辺りをうつしてくれたろ?僕はその地帯を見たことがない。いまどき見渡して家が建ってませんなんて、ほとんどありえないからな』
「で、でも先生、私が武将さんにお世話になってるって話は」
『信じるよ、の怯えている眼は現代では殆ど見られない警戒心をむき出しにした人間の目だ。』
まだ信用しきってないんだろう?と山内に言われれば、確かに優しくしてもらってはいたがそこまで信用してすべてを見せていなかった気がする。例えばキャリーバッグの中身とか。
「どうすれば、いいんでしょう。私何処に行けば」
『っ、いい?護身用のナイフみたいなの持ってたわよね。それ絶対に手放しちゃだめだよ』
そりゃわかってるよ、と返すが薫は違うよ、と首を振った。
『そのナイフみたいなのに武田の家紋ついてるじゃない。』
「あ、うん」
『それお館様からの気遣いだよ、なにかあったらこれを見せなさいっていう』
確かにはこの世界で使える金品や身分を証明するものなど持っていない。それをわかったうえで家紋付きの短剣をわたし、いざとなったらこれを見せて解決しろと、そういう意味なのではないかと薫に言われた。
「そっか、…最後までかんがえさせちゃったんだ」