第8章 まさかくるとは思ってない
自室に連れていかれたはくのいちに抱き付いて大声をあげて泣いていた。
「もうやだ!真田さん嫌い!みんな嫌い!でもくのいちさんは好き!」
「…。」
くのいちは溜息をついて黒い頭巾やらなんやらを解いた。こういった姿は殆ど見せないんじゃあ、とがぽかんとしていると
「…あ、あれ、かすが…さん?」
「なんだ、私の事を知っていたのか」
あの上杉謙信にほれ込んでいるかすがが何故か武田領、というか佐助に仕えていた。何故だ、ここもアニメやらと違うの?と混乱していると
「分かりやすいなお前は…私はただ任務中会っただけだ。いつもの格好だと佐助の主がうるさいからな」
どうやら会えたのは偶然だったみたいだ。まあだいたいが偶然なんだろうが。
かすがは自己紹介もほどほどに、もう上杉領へ帰るのだという。はいやいやと首を振ってかすがに抱き付いて離さなかった。
「お前には女中がいるだろう?私は一刻も早く謙信様にお会いせねばならん」
「じゃっじゃあちょっとだけ!話し相手になってくださいッ」
「はぁ?それなら佐助や主が」
「男じゃダメなんです」
真剣な顔で言うとかすがは仕方なさそうに
「…日が沈む前には出る」
とそっぽを向いた。ツンデレ最高!と口に出してしまったが案の定意味は分からないらしくかすがは首をかしげていた。