第8章 まさかくるとは思ってない
その後も何度か信玄も話しかけてみるものの、だめです、の一点張り。
仕方がなく1人ほっとくことにした。と言っても近くにこうしてしまった責任の幸村を残して立ち去ったのだ。
さすげに困りはてた幸村が勇気を振り絞ってを抱え上げて部屋に戻ろうと手を差し出した。
「殿、お館様も心配しておりますぞ」
「だめ、今はだめ、真田さんもあっちいっててください」
「それは出来かねる、部屋に戻ろう」
「私だって戻りたい、ちょっと、今ここで休みたいんです」
顔をこっちに一度もむけないまま会話は続く。
仕方なくそばの石に座り込んでの様子をじっと見守っている幸村だったが、こうしてもうどれだけ経ったのだろうか。かなりの長い時間こうしている気がするとうずうずしてくる。
「…殿、体調がすぐれないのでござるか?」
「……お腹が、すごく痛くて、潰れそうで、吐きそうで、頭痛いです」
それを聞いた瞬間幸村は今まで動きもしなかったを無理矢理抱え上げ、部屋に連れて行った。
「ちょっ、やめてくださいッ!!おろして!やだぁぁッ!」
「静かにしてくだされ!みなが見に来てしまうだろう!」
「これだから初心ってやだ!もう!!誰かぁぁぁぁ!!」
そう叫ぶと咄嗟に手裏剣を構えた佐助とその部下たちが一斉にあらわれ、何があったとそわそわしだす。
だが担がれているが嫌がって出した悲鳴だとわかると数名の部下が戻って行った。何人かは残ったのだが。
「…っ長。ここは私達にお任せを」
そう言ってくのいちは幸村からを奪い取り、さっと消えて行ってしまった。
何を察したのか佐助はじーっと幸村周辺を見て、道場前の庭を見て、ため息をついた。
「旦那、ちょっと…反省した方がいいよ…」
「なっ、お、俺が悪いのか?!」
「うん。」
幸村は疲れ果てていた。