第6章 馴染むって決めたんです
案の定あのあと大声で破廉恥だとかいいなが部屋を凄い速度で出て行ってしまった。小山田はそれをなだめに行く係りなのかお待ちください!と言って後をついて出て行ってしまった。
「…猿飛さん、有難うございます」
「忍びにお礼?言うなら大将に言ってくれよ」
やはりは佐助の顔は直視できず出て行ったふすまのほうに体を向けながら、ほとんど呟き状態で言った。
「殺さないでくれて有難う、って意味です」
興味があまりないのか、佐助はあっそ、と言ってそのまま無言だった。出て行ったのかと振り返ればまだそこには佐助の姿があり、何かと思って黙っていると佐助から話し出した。
「俺様さ、正直まだアンタを信用しきってない。先人の世だなんてありえない話だって思ってる」
「はぁ」
何を言いたいのかよくわからず、眉間にしわを寄せていると、先程までの険しい顔から困ったような笑みを浮かべて
「好きじゃないけど嫌いでもない。せいぜい死なないように生きてればいいよ」
邪魔にならないようにしてね、そう言って屋根裏に消えていった。
「…余計だってば」
だがは何故か受け入れられたような気がした。
これも忍びの策の一環なのかもしれないが、妙にやり取りが自然で、張り付いた硬い笑顔じゃないやわらかい表情を見せてくれたのが気持ち悪いほどの顔をにやけさせて。
きっと仲間に入るってこんなに難しい事なんだな、と戦争もほとんどなくなった日本を思い出して苦笑した。
「殿っ申し訳ありません!」
「あ、大丈夫ですよ」
2人きりにしたことを謝りに来たのだろうがもう遅い。でも意外と悪くないと思ったので戻ってきた小山田をとがめることはしなかった。
「…何やら嬉しそうですね?」
「滲み出てます?」
「それはとても。」
顔を見合わせてクスクスと笑った。