第5章 ごたいめーん…
「で?名前教えてよ」
「 といいます」
「へー…、か」
苗字が気になったのか考えているようだったが、特に思い当たることもなかったのかとりあえずよろしく、と言葉を漏らした。
なにも話すことがなく無言で廊下を二人で歩いていると大きな道場のようなところが見えた。中から声が聞こえており、数人の男が中にいるのだと推測される。
「先人の時代ではこういうところはあった?」
「まあ、あることはありましたけど物好きが行くところでしたかね」
はそれほど興味を持ったことがなかったので道場は物好きが行くところだと思っている。そもそも道場は何をするところなのか把握ができていないところからにはそんなに常識がないのではないかと思う。
「今ここで真田の旦那と小山田の兄さんが鍛錬してるけど見る?」
「えっいいんですか」
いいならぜひとも拝見したい。しかし幸村は重度の女嫌い、というか女を苦手としているのに大事な鍛錬中に邪魔をしてしまっていいのだろうか。
そんなのお構いなしと言わんばかりの顔をして佐助は道場の引き戸を開け、中に入る。続いて中に入るとそこはまるでサウナかと思うくらいにまで蒸しあがっていた。湿度も高いし気温も相当高いだろう。並の人間ならこの中で槍を振り回すなんてただの地獄だろうと思ったが、そういえばバサラの登場人物は大抵並の人間ではなかったを思い出した。
「…わぁ、すごい」
「あの赤いのが真田の旦那で、それに立ち向かってるのが小山田の兄さんだよ」
二人とも真剣勝負なのでこちらにはまで気が付いていないようだ。外野が何人かいるようだがそれも視界には入っていないらしい。
「ていうか皆さんよく耐えられますね」
「うわああ?!!」
足軽だと思われる方々に声をかけると驚いた様子でこちらを見てきた。しまいには声を出す者までいて、まるで幽霊を見るがごとくの目だ。失礼極まりない。
「…はぁ?」
みんな女に耐久がないのだろうか。