第5章 ごたいめーん…
椿と雑談しながら歩いているとものすごい雄叫びが聞こえた。鼓膜が破れてしまうのではないかというくらいの爆音だ、雑音ではないが。
「これって…!」
「ええ、真田幸村様の声ですね」
椿はうるさそうに目を細めて道具を取りに行く足を速めた。椿はどうやら幸村が苦手なようだ。それにくわえ佐助への態度もそっけないというか、目を合わせていないのをは知っている。自分の近くに現れるとそそくさとその場を離れてしまう。
「佐助ぇっ客人が来ていると聞いたのだが!!」
「あー…うん、来てるよ。客人っていうか…」
そんな会話が聞こえて思わずはにやけてしまった。自分のことを話してくれていると思うと頬が緩む。
「…様ッ!」
「はい!どうしたの?!」
「早く行きますよッ!」
椿は怒っているのだろうか、の腕を引っ張りながら恐らく幸村たちのいる場所から遠回りをしようとしている。
すると風が吹き、目の前に佐助が現れた。
「さっ…猿飛さん」
「着いたんだったら声かけてくれればいいのにー」
「…様が困ってらっしゃいます、これからお掃除をするので失礼します」
「えー?旦那に紹介したいんだけど」
っていうかっていうのねアンタ、と佐助は特に興味もなさげな顔で言った。興味がなけりゃ復唱するなと言いたかったが、それもまたぐっと抑えた。今ここで争いの発端は作りたくない。
なによりは幸村をナマで見てみたいのだ。見る前に追い出されるなんて御免だ。
「椿ちゃん、あとから行くから…」
「…わかりました」
ぶすっとしながら椿は先にいったようだった。