第21章 目に見えた希望が
特別な道、それはなんと地下に続く穴だった。
「えっと…」
「アンタ、先人なんだろ?なら穴を掘る道具だってあるんじゃねぇか?」
いつからそれを、と聞きたかったが、今こたえる問題ではない。
どうやら地下に穴を掘るための機材を作っていたらしい。元親らしいといえば元親らしい発想だった。地上が駄目なら地下に道を、なんて。
「結構険しいからな、足元には気を付けろよ」
優しく手を貸してくれた元親に少し体重を預けて穴倉にもぐりこんだ。
次の瞬間。
ドォオンッ!!!
鼓膜が破れてしまうのではないかという轟音と共に土煙が舞い上がり、視界が一気にシャットアウトした。
すると誰かに背中を押され穴倉深くへところがりおちてしまう。
「早く行け!!俺ァここにいる!」
どうやら背中を押したのは元親のようだった。察するに、明智に気が付かれたのだろう。
もしかしたらずっと気が付いていたのかもしれない。泳がされていたのだろうか。
「すみま、せ」
かすれた声では一言詫びを告げ穴倉の中へと駈け込んでいく。これがどこにつながっているかなんて考えている暇は全然なかった。もうここから出られれば何処へ行ってもいいと、そんな思いだった。
後ろからは元親の怒鳴る声と爆音だけが鳴り響き、何と対峙しているかははっきりとわからない。はじく金属音は耳を劈き眩暈がするほどだ。
もともと足は速い方ではない。だから後ろから追手が来れば直ぐに追いつかれてしまうだろう。
だがそれもこないのは今でも逃がしてくれる元親の御蔭だ。
今度、謝ろう。もう一度会った時に謝ろう。
はそう心に決め、疲れて止まってしまいそうな足に鞭打って走り続けた。