第20章 喪失への恐怖が
「、と言いましたね」
「…はい」
「武田が動き出したようですよ?此方に向かっているそうです」
光秀の忍びは随時武田、伊達軍の行動を報告していた。その様子を光秀の隣でぼんやりと聞いていた。
「椿ちゃん…」
「…あなたも生物の生死に囚われる人間なのですか、先人も大したことありませんねぇ」
そんなに残念そうでもないのに肩を落とす仕草を見せる。
所詮変わらぬ人間のサマをみて、安心したのか喜んだのか、それとも悲しんだのかなど光秀の表情からは一切読み取れない。
「さて、迎え討つとしましょうか」
「え、…幸村さんたちと、戦うんですか…?」
「当たり前でしょう」
此方に向かってくるのですから、と鎌を大事そうに撫でた。
早く助けに来てほしい、ここから出してほしい、そうは思っている。だが椿の命があっけなく途絶えてしまったところを間近で見て、死への恐怖が倍増してしまったのだ。
幸村も佐助も、信玄も、皆そうやって命が消えていく。死は平等に訪れるのだ。
それがたまらなく怖かった。
「…駄目、ですっそんな、また失ったら…!!」
「その時は織田へ来れば良い」
「…ッ!」
目の前には妖しげに微笑む光秀、後ろには壁。座って頭を起こしているだけでも精一杯のに逃げ場などなかった。
「あなたの知、教えてもらいましょうか」
「ひっ」
顎を掴まれ、顔を動かすことができなくなってしまうと、もう涙が出るのも止められなくなってしまった。