第19章 恐怖でしかない
「おや、泣きわめかないのですねぇ…」
つまらない、と言葉を吐き捨て、にこり笑んだ。
「さぁ、私と共に織田へくるのです」
「な、なにを…」
「殿ッ!!」
光秀の背後に小山田が見え、すぐに光秀を切り付ける。
だがどれを華麗にかわし、小山田へすぐに攻撃を返す。ふらふらと千鳥足のような動きで予測のできない攻撃ばかりする。
「お、小山田さん…っ」
「私と共に来ればこの男の命も助けて差し上げましょう」
「…もって、え?まだ、いるんですか」
ふふ、と怪しげに笑む光秀は小山田から少し距離をとる。小山田も刀を持ち直し、もう一度硬く構えなおす。
「勿論城下の人間、この男…そして、織田の城に迷い込んだ忍び…いえ、女中でしたかねぇ?」
それを聞いて、は顔を青くする。
「ま、まさかっ…」
「名は…えぇ、確か椿」
さらりとその名を聞けば、はその場に崩れ落ちる。
嘘だ、まさか椿が捕まるなんてとまた混乱する。
「あなたが私と共にくれば命は助けて差し上げますよ?」
「くっ…殿!いってはなりません!!」
小山田は光秀との交戦に耐えながらもを引き留める。
だが#name1はこの時既に向かおうかと考えていたのだ。自分の命一つで沢山の命が救えるなら、と思っていたのだ。
正直行きたくはない。殺されてしまうだろうと考えれば誰が犠牲になろうと自分が生きると考えた。だが今、なぜか他の人を助けたいと思った。
「…ッ、ごめんなさい、小山田さんっ」
光秀にゆたゆたと歩み寄り、頭を下げる。
「よろしく、お願いします」
その途端、周りが薄暗い闇に覆われた。