第18章 気持ちに嘘はつけません
は余計な心配をかけないようにするため、蹴っ飛ばしてしまったキャリーバッグの中身を整え始めた。
「…某は、無力でござった」
「無力なのは私ですって」
「そ、そんなことは」
「私は何もできないただの小娘、情報でさえ吐くことができない小娘ですよ」
本当はそう思っているんでしょ?と幸村に聞けば、今度は幸村が思い切り柱を殴った。
何事かとは驚き、かたずける手を止めた。
「…何を言っているのだ、殿は無力ではない」
「じゃあ、何ができるっていうんですか?!」
「某に恋をするということを教えて下さった!!」
「?!」
もう一度柱を殴る、すると柱はめきめきと音を立てて崩れてしまった。
「ちょっ、は、柱」
「某は力に頼るしか能がない、何も考えることができない、うつけだ」
殴ったことで血がにじんだ拳はとても痛々しく、思わず視界に入らぬようは目を伏せた。
「この紅を流すことでしか生きるということを感じられぬ、前田殿が言うように某は戦馬鹿なのやもしれぬ」
には言いたいことがよくわからなかった。幸村が何を伝えようとしているのか、その傷つけた拳で何を示そうとしているのか。
「生きるということは血を流し、涙を流し、忠義を誓うことだと思っておった」
だが違う、と幸村は目を伏せるの目の間に座り込み、優しく髪を撫でた。
ふとが顔を上げるとふわりと優しく微笑む幸村がいた。