第18章 気持ちに嘘はつけません
信頼はそんな簡単に生まれるわけではない。長年付き添った相手に生まれ、大きくなるものだ。
そんな事は分かっていたはずなのに、相手は忍びだという事も分かっていたはずなのに。何故こんなにも心が寒くなるのかがわからなかった。
「やだな…結局誰にも信じてもらえてなかったってことか…」
自室に置いてあるこのキャリーバッグでさえもうっとおしい存在になっていた。
平成と戦国の世をつないだのはこのキャリーバッグと言っても過言ではなかった。
「…っ」
キャリーバッグを思い切り殴り、蹴り飛ばし、己の足が痛くなり、赤くなるほど自分自身を傷つけた。こうでもしなければ心が壊れてしまいそうだった。
あんなに幸せに思っていた暖かい気持ちは何処に行ったのだろうか。幸村は信じてくれるだろうか、と、不安だった。
不安で不安で仕方がなかった。
「殿ッ」
キャリーバッグを蹴り飛ばした音が聞こえたのだろうか。幸村が走りこんできた。
咄嗟には何事もなかったかのように笑った。
「え?」
「…ッ、佐助が、何かまた」
「佐助がそんなことするわけないでしょう?」
「だがっ」
「私は何も言ってませんよ」
そうだ、ここに戻ってきたこと自体が間違いだったんだ。はもう落ち込み過ぎて自分を責めることしかできなかった。
ここに戻ってきた、いや、この時代に来たことがまず間違っていたのだ。そのせいでこの世界がおかしくなってしまったのかもしれない。
自分が、異質だから。異物だからと。