第18章 気持ちに嘘はつけません
「…あ、そうだ、ここに来る前に俺さ、すっごい視線を受けてたんだよね」
「い、如何様な?」
「殺気に似たそれだよ、俺とちゃんがぎゅーってしてた時」
そう話すと幸村から先程感じた殺気と似たようなものが感じられた。
きっと見ていたのだろうと慶次は笑った。
「その時もやもやしなかった?」
「…うむ、胸の内が煮えたぎるような…とても晴れぬ気分であった」
「それは嫉妬だよ、好きな女の子を自分じゃない誰かにとられそうになったりすると抱く気持ちさ」
「嫉妬…。」
人間は難しい、と幸村はムッとしながら俯いた。思い出してまた腹でも立ったのだろう。
こういう事を考えいるときは幸村も普通の男に見え、慶次はまるで弟の世話でもしているような気分になる。
「それも大切な経験さ、恋のことで躓いたら俺に相談してくれよ」
一言そう言ってやれば幸村は嬉しそうに大きくうなずいた。
本当に戦場で駆け回っている紅蓮の鬼なのだろうか、本当に日ノ本一の兵なのだろうか、そう疑いたくなってしまう。
きっと幸村も一般民として生まれていたなら、こんな風に皆から恐れられ、称えられるようなこともなかっただろうに。と、慶次は何故か悲しくなってきた。
「前田殿、有難うございまする。某は、本当に…本当に感謝しておりまする」
「そっか、幸せにしてやんな?」
「そっそこまで考えておいでか?!」
「えっ考えてなかったのかい?!」
「破廉恥でござる!!!」
破廉恥基準がわからなくなったところで慶次は大笑いし始めた。
幸村は納得して無さげな顔でその様子を横目で見ていた。