第16章 放浪も悪くない
「っはー!おいしかった!…食べ終わった後もなんか無いの?」
妙に積極的な慶次は身を乗り出して聞いてくる。きっとこういった生命にかかわることは興味があるのだろう。それはいいことだ。
「ご馳走様ってやつだね」
「ごちそう…さま?」
「うん、ご馳走の馳走って、走る回るっているいみじゃん?」
慶次は一度手のひらに文字を書いて考えてからそうだったっけ、と笑った。
どうやら慶次に漢字の事を説明してもだめらしい。
「…なのね、大事なお客さんをもてなす為に馬に乗ったりして遠くから食材調達した人たちへの感謝の気持ちを表す言葉っていうことで使われるようになったんだって」
「わざわざ持ってきてくれてありがとうってこと?」
「そういう事!」
慶次はまたそうなんだ!と納得したように手を合わせてご馳走様!と叫ぶように言った。
「はい、お粗末様」
「…そ、それは?」
「……えっと、確か、粗末な料理でごめんねって意味だったかな!」
まさかここまで聞かれるとは思わなくて咄嗟に出て来た意味がこれだったがあっているのだろうかとは不安に思った。が、まぁらしい言葉が口から出てきてくれたのでいいかと笑った。
「そんな事ないぜ?すっげぇ美味しかったし、満足満足ってな!」
「そりゃよかった!」
と慶次はその後お茶を飲んで談笑し、布団をさっさと引いて寝ることになった。
ここにはふらがないようなのでどうしてもそれは我慢せざるを得ない。
だがは思いだした。そうだ、汗ふきシートがある、と。
「…慶次慶次、ちょっとにおいキツイかもしれないけど、脱いで」
「……えっ?」
その沈黙の意味にはすぐに気が付かなかった。