第16章 放浪も悪くない
「うまそうだなーッ」
「不味くても無言で食べて、絶対だよ」
「こんなにうまそうなにおいしてるんだから大丈夫だって!」
は無事に作り終え、こうして慶次の前に料理を並べた。
食器などの類はキャリーバッグの中から紙皿を取り出してその上に盛り付ける。箸も同じように割り箸だ。余分にお徳用を持ってきて正解だったとは満足げに頷いていた。
「未来にはこんなに便利なものがあるなんてなぁ」
「全部便利すぎてダメになっちゃうよ人間が。」
「でもほら、これ作ってる人とかすっげぇ頭いいんだろ?」
「さ、さぁ」
流石に紙皿や割り箸を作った人がどんな人物かは知らない。なんせが生まれる前からあったのだからそんな事は知る由もない。
「さて、いただきます」
「…い、いただきます!」
どうやら慶次もいただきます、という単語は知らないらしい。これは夢小説であるあるの食事の場面だろう。武田や伊達ではもう教えたのだが慶次にはまだ教えたことがなかった。
この時代にいただきますという言葉が存在しているのか否かは定かではなかったが、少なくともこの世界の武将たちは知らないらしい。
「なんかぎこちなくない?」
「え、あー…ごめん、意味が分からなくて、いただきますってどういう意味なの?」
言葉の通りだよと言ってしまえば簡単だが、そこはうまく説明してみせるのが夢主の特権だ!とはこちらに来る前にちゃんと下調べをしてきたのだ。
「二つ意味があってね、一つ目がこの料理ができるまでに携わってくれた人にありがとうって意味。」
「ってことは…とか野菜を作ってくれた人ってこと?」
「そうそう、あとは食材たち、だね」
慶次は小首を傾げた。
「あー…と、ほら、野菜だってお肉だってもとは生き物じゃん?だから、あなた方の命そのものをいただきますって、そういう事。」
そう言えば慶次はぱぁっと笑顔を見せて、それはいいことだとニコニコしながら
「いただきます!!」
と言った。