第16章 放浪も悪くない
慶次は顔を真っ赤にして慌てふためていた。はそれを見て意味が分からないと眉間に皺を寄せる。
「ぬ、脱ぐ…?!」
「うん、背中出して?」
「なんで?!」
いやいやと頑なに拒む慶次を見て、ハッと思いついたようには顔をバッと上げた。
慶次は≪そういう意味≫だと思ってしまったのだろう。
「ちっがう!!私がそんなこと言うとでも思ったの?!背中拭いてあげるって言ってるの!!」
「あっ、そ、そういう事?!そう言ってよ!」
わかるだろ、とは汗拭きシートを一枚取り出して慶次の背中をぬぐった。慶次は突然した匂いと冷たさに驚いて声には出なかったが体をこわばらせた。
「これね、汗拭きシートっていって、汗のニオイとべたべたを取ってくれるんだ」
「へ、へぇ…優れもんだねぇ」
だんだん慣れて来たのか拭かれることに違和感がなくなったのかが拭いている間鼻歌を歌っていた。
慶次の背中には小さい古傷が沢山あった。これはどうしたのだろうと古傷をなぞると慶次は振り返って不思議そうな顔でこちらを見て来た。
「まだそこに傷ある?」
「え、あー…うん、ある。小さいのがある」
「それな、俺がまだ餓鬼の頃柿の木に上って下に落ちた時に怪我したところなんだ」
「は?そんな事してたの?」
「いやぁ柿が旨そうで…はそういうことしなかったのかい?」
「よくしてた。」
「人の事言えねぇじゃん!」
慶次はゲラゲラ笑っての背中をバンバン叩いて笑い出した。
きっと女子がそういう事をするなんて思ってもいなかったのだろう。