第16章 放浪も悪くない
「なんて?」
「…はは、ここの奴らは俺が来ること分かってたのかな」
ほらここ、と指さしたところは、かろうじて読める字で慶次、と書かれていた。
どうやら慶次宛てに書かれた置手紙だったようだ。
「年貢が辛くてここを出るって、残してある野菜は好きにしてくれって」
「…そっか」
やはりそういう事だったか、とは畑の方角を見た。もう夕方になっており、日が落ちていた。
「もう夕方かぁ」
「…早いな、、飯って作れるか?」
「あー…やろうと思えばできるけど」
は女子力が皆無である。可愛いお菓子やおいしいデザートなんてものはまず作れない。
その代わりと言っては何だが主婦力なら多少あるのだ。
基本的な料理、といっても米を焚くとか、軽く炒め物を作るとかそういった類の物だ。
「おっ、じゃあなんか作ってくれよ!」
「え?いや、どうだろう、平成とここの料理の仕方って違うんじゃないかな…」
「えー俺ちゃんの手料理食べてみたい!」
「…んー、じゃあ火を焚いといてくれない?やり方わからないし」
「おう!」
慶次は嬉しそうに台所の方に向かうと薪を集めあっという間に火をつけてしまった。
は食料調達の為畑の方へ出て行く。
「…ここに来て料理作ることになるとは、勉強しとくべきだったわァ…」
今更後悔しても遅いのだが深いため息をついた。