第16章 放浪も悪くない
「…今日は、ここで宿を借りよう!」
「え、ここで?」
「うん、俺、この村全部回り切れてないんだ」
慶次は訪れる村すべての家に顔を出すのだという。
人は一人ひとり性格も表情も違うし、それによって家の中も違くて面白いのだという。
この村はそんなに片付いておらず、まだ人が住んでいてもおかしくないくらいに散らかっているところもあった。
「ちゃんはここにいて?」
「はーい」
は言われた通りある家を借りて中に入った。
そこは結構かたずいていて、広めの家だった。きっとここの村長の家なのだろうとはまず台所へ向かった。
食料は全て無くなっていたが、包丁やらまな板やらの道具は残っている。
そういえば、と畑にまだ野菜があるのを思い出した。きっとここを通りかかる人たちに少しでもわけてやろうと、そういう心遣いなのだろう。
「…お、なんだこれ」
部屋の中に入ると紙が一枚、残されていた。
残念ながらは文字が読め無い為どうすることもできなかったので、おとなしく慶次が帰って来るのを待とうとそわそわしながら正座をしていた。
「ただいまー」
「あ、回ってきた?」
「うん、いやぁ散らかってるところばっかりだったよ!」
けらけらと笑っているようだが、やはりつらそうな顔をしていたのには気が付いた。
そして先程見つけた紙を思い出したように慶次に渡すと途端に真面目な顔になってその紙を読んでいた。