第15章 恋しい気持ち
「よ、おるかの」
政宗から逃げるようにして部屋へ去った後、はもう何もする気が起きずに平成から持ってきた本をずっと読んでいた。
因みにまだこの時代の書物は全く読めない。あのミミズ文字だらけのものはどうしても目を向ける気にはなれなかった。
「…はい」
本を読んでいると義姫が訪れてきた。
国主の母親が得体のしれない客人に顔を出しに来るとは考えてもいなかったので義姫の声だと理解するまで少しだけ時間がかかった。
「すまぬな、こんな夜更けに。寝ようとしておったであろう?」
「ん、いえ…大丈夫です。どうかされたんですか?」
義姫はおまえの顔が見とうなったと言って部屋に入ってくるとの目の前に腰を下ろした。
「…寂しそうじゃのう、その目には一体何を映しておるのじゃ」
「え…?」
「まるで右目を失くした時の政宗の目、それとよう似ておる」
優しくふわりと笑むとを優しく抱きしめた。
義姫からは少しだけ酒の香りがした。本当ならすぐに体を離したいところだったのだが、思いのほかそこがとても居心地がよく、つい義姫の肩に顔を乗せた。
「ため込み過ぎては、壊れてしまうぞ」
まるで泣いている幼子をあやすようにの背中をぽんぽん、と叩いた。
はそのリズムを感じ取り、目を閉じた。
「、妾はな、おぬしのそばにいてやりたい」
「…私、などに」
「母を傍に持っておらぬと聞いた、遠い地に置いてこの日ノ本に来たと」
一体誰が話したのかはまだわかっていない。
は頷こうとは思わず、義姫の心地よい声に耳を澄ましていた。