第14章 母親の声が
すると義姫は思い出したようにそうじゃ、と言った。
「ここに新しくおなごが来たというが……あぁ、そなたかの?」
「…っ、は、はい」
怯んでしまったが小十郎が膝を優しく叩いてくれたことで変な間はそんなにできず、違和感なく返事を返せたかと思う。
義姫はを手招きで呼び、目の前に座らせるとふむ、といってじぃっと見つめている。政宗はその様子を不審そうに見つめ、小十郎もまた心配そうに見ていた。
に至っては平手打ちでも食らわしてくるのではないかとかなり警戒をして突然襲ってくるであろう痛みや衝撃に耐えるために体をこわばらせていた。
椿は後ろから殺気を放っているようで宴という雰囲気はぶち壊しである。
「…、と申したかの」
「え、…はい」
いつ誰が教えたんだと横目で政宗を見るが首を横に振ったということは政宗ではない。きっと義姫に報告した者が教えたのだろう。
「……政宗の近くに寄ったのはなぜじゃ」
「おい、何言ってんだ」
「政宗は黙っておれ、よ、正直に答えるのじゃ」
義姫はの目をじっと見て言う。嘘はつくな、そう言っているのだろう。
は義姫を前にして嘘をつこうとは思っていなかった。どうせついたとしても気が付かれてしまうだろうし、やましい事なんてないのだ。正直に言って受け入れるならそうしてほしい、拒むのならそれでいいと口を動かした。
「興味です」
「…今なんと申した」
「ただの興味です。政宗様は奥州を束ね、器量を持ち、一度でいいからお目にかかりたいと思いこの地に来たのです」
絶対に叩かれると思った。
こんなに自分に馬鹿正直になったことはなかったと震える手でぐっと拳を作った