第14章 母親の声が
日が落ちれば落ちるほどの胃の痛みは増すばかりだ。
まだ残っていた胃薬を飲んでも、深呼吸を繰り返しても、大声で叫んでみても頭の中から緊張は消え去ってくれない。
「人、人、人…っ」
緊張を抑えるため気を紛らわせるが全く効かなかった。
そもそも義姫の事をよく知らない。病気になった政宗を嫌い、毒殺しようとしたというあいまいな知識しかない。それが本当なのかも確かではない。
暫くすれば椿がやってきた。どうやら宴の席に呼ばれたようだ。
「そろそろのようです」
椿も義姫の事までは把握していないようでどうすればいいべきかと今の伊尼まで策を練ってきたようだが、結局いい案など思いつかずに今に至るのだという。
「…拒めば行かずともすむかもしれませんけど、どうします?」
「折角誘ってくれたんだし…行くしかないって。」
「そう、ですか…」
椿も一緒に来てくれると言ったがどうやら座る場所は離れているため、すぐに助言をすることは不可能だという。それは仕方ないよとは優しく椿に声をかけたものの、不安などぬぐいきれるはずもなく、心臓がばくばくいったまま宴の席に入ることになった。
宴の席には今まで見たことのない兵から見覚えのある話した兵。上座には政宗がいて、その近くには小十郎が静かに座っている。
は何処にいるべきなのかときょろきょろしていると政宗が手招きをしてきたので素直に近寄ってみる。
「ええと、私は…」
「小十郎の隣にいろ、母上となるべく目を合わせないようにするんだ」
そう言った政宗の顔はそれほど機嫌がよさそうには見えなかった。
やはり親子仲が悪いのだろうか、不機嫌そうに上座に胡坐をかき、目線をあちらこちらに揺らしている。その様子を小十郎もまた不安げに見ていた。
は取りあえず黙ることから始めようとできるだけ堂々と座ることを心掛けた。