第14章 母親の声が
どうやら歓迎の宴は開かれないそうだ。
なによりが望まなかったし、酒が苦手なんだという旨を伝えれば小十郎が無言で宴を行わないことを決めたとか何とか。
その代り今夜の政宗の酌には付き合わされることになった。
「…」
「なんでしょう」
「帰りたいって思うことはないのか?」
あんな良い母親のもとに、そう話す政宗は一切の顔を見ることなく、よおらに浮かぶ星を眺めながらそういう。
「正直わかりません、望んできたようなものですし…」
「…ここに来て、何をしたかった?」
「…いや、何がしたくて来たわけじゃないんです」
非日常を求めていたのかもしれない、そう言えば政宗はそうか、と言って言葉を発することを止めた。
は一体何をしたいのか、何のためにこの世にきたのか、目的があるなら協力してやりたい、きっと政宗はそう思ってたのだろう。
だがには目的がない、やりたいことがわからない、行く当てもない、そうなると居場所を与えてやることが今にしてやれること全てだ。
「…Mommyが好きか」
「いい母親ですよ、御節介だけど一緒に遊んでくれるしお出かけもしてくれます」
「そうか、アンタは恵まれた子だな」
その言葉の裏に、俺の母親とはまるで違う、そういう意味を込めたものだったんだろう。
は勿論そのことをよく知っている。
様々な夢小説を見てきたのだ。政宗が実の母義姫と仲が悪いということを。
もしかしたらここでもそうなのかもしれない、突き放されて育ったのかもしれない。母親からの愛情を知らないのかもしれない。
はそこには突っ込まず、酌を続けた。