第14章 母親の声が
小十郎が来る数分前、出てから少しだけ間があり、電話口で話し始めたのはの母親だった。
『伊達政宗さんね』
「…あぁ」
小さなからくりから聞こえてきたその声はどこかと似ていると思いながら政宗は返事を出す。
『を頼みます。』
「俺に、か」
『今あなた以外に話ができないんですもの。あなたに頼む以外誰に頼めばいいかわからない』
政宗はに興味を持って連れてきた。それ以外に理由などなかったのだ。
あの行きつけの茶屋で椿ともう一人の女、を見かけて。そして夜お忍びで来てみた城下で再びと再会した。
まさかここで会うとは、と思い声をかけてみるがは政宗の事を全く覚えておらず、ましたや国主にとる態度ではない反抗的なそれにもっと興味が湧いたのだ。
翌朝探しに町に出るものの見つかる気配はなく、試しに門に見張りをつけてみたら見事に小十郎が見つけ出したとの報告を聞いたときは本当にうれしかったらしい。
「…Mommy、俺は興味だけでを連れてきちまった。咎められるべき立場の俺に何故大切な娘を任せる?」
『は繊細な子なの。誰よりも責任を感じて、そのせいで鬱になりそうな時もあった。誰かの手助けなしでは生きていけないような子なんです』
「だとしても、だ。俺に伝言でも託して甲斐の…ah、武田信玄やら上杉謙信の所へ送り届けろとでもいえばいいだろ」
そう政宗が言えばの母親は分かってないわねぇ、と言った。その口調に少しイラついたのかなんだ、と返せば呆れたように言葉をつづけた。
『国主様の独眼竜よ?女一人くらい余裕で守れるものではないの?』
それを聞いた政宗は携帯を握って少し言葉を詰まらせた。
確かに女一人かくまうのはなんてことはない。だが異世界から来た先人だ。仲良く血生臭いものを見せないように暮らすなどということはできないのだ。
「…につらい思いをさせちまう」
繊細なんだろ?というと電話の向こうで大声を出して笑う声が聞こえた。
政宗も口端が緩んだ。