第13章 奥州でも話します。
「…で、ちゃんは何処に住んでたの?」
「此処に来る前は、武田でお世話になってました」
「やはり武田が送り込んだ忍びか?」
小十郎がを抉るように睨み付けて言った。それを慶次はまぁまぁ、と抑えつつもの様子を伺いながら話を進める。
「武田でずっと世話になってたのかい?」
「…いえ、つい最近から、です」
話してしまうべきか、隠し通すべきか、どちらにせよ返答次第ではこの場で切り捨てられてしまうかもしれない。はそんな恐怖と戦っていた。
慶次はなるべくが困らないような質問を選んでくれた。
「そっか、親御さんはどうしてる?」
「………さぁ、わかりません」
そうが言って俯けば慶次は有難う、と言って小十郎の方に向き直った。
政宗は話を聞きながら執務を淡々とこなしている。ミミズ文字のようなそれはが見ても全く解読できない。
「ちゃんはうちで預かっちゃダメかな?」
「えっ?」
行き成り何を言い出すかと思えば慶次は小十郎に交渉を始めた。驚いたは小十郎の顔を見た。
その顔は先ほどよりも複雑な表情をしていて政宗のほうを目線だけで追っている。
それにつられて政宗を見ると筆をすでに置いていて、慶次を思い切りにらみつけていた。この軍はにらみつけるのが好きなのか癖なのか。流石不良染みた集団である。
「だってちゃんは望んでここに来たわけじゃなくて、行くところも特になくて、独眼竜にここに連れてこられた理由だって話されてないんだろ?」
「ま、まぁ」
「だったら前田に来ればいいよ、利もまつねぇちゃんも歓迎してくれるからさ!」
不便もさせないよ、と誘ってくれてはいるが、視界の端にいる政宗が何も言わないが許してくれなさそうな雰囲気でいるのはわかった。