第13章 奥州でも話します。
「此方におられる。」
いくら性格や人物像がわかっているからと言って油断はできない。長曾我部の様にまるで別人のような状態なのかもしれない。
「あ、はい」
生憎まだ礼儀作法というものは身についていない。
武田軍にいた時はそんなものを気にしることは一度もなかったのだ。気が付いたら真後ろに佐助は立っているし、幸村は叫んでいるし、信玄なんて畏まって話すと気を抜けと言ってくれていたのだ。
「政宗様、お連れいたしました」
「おう」
短い返事が聞こえて中を見れば執務中なのだろう、沢山の資料と向き合っている政宗の姿があった。かったるそうに肘をつき、腕まくりをしている。まるで一国の主とは思えない態度だ。威厳がない。
「…お初にお目にかかります、私は」
「No」
「は…?」
資料から目だけをこちらに向けた状態で否定された。いったい何を否定されたかわからなかったは口をぽかんと開けてしまう。
筆をおき、政宗は体をこちらに向けた。胡坐をかき、あくまでもダルそうにしながら口の端を釣り上げる。
「初めまして、ではねぇな」
「…私はあなた様の事は知りません」
「んなこたぁねぇだろ?迷子のfriendを探してただろうが」
「………あっ!」
聞き覚えがある声だとは思っていたが、まさかあの笠をかぶっていた男が政宗だったとは思わなかった。椿が嫌そうな顔をしていたのはもしかしたらこのことに気が付いていたからかもしれない。