第13章 奥州でも話します。
「片倉小十郎さん、ですよね…」
「名乗った覚えは無いぞ」
「有名ですから…」
また佐助とは違った感じの威圧感だった。きっと小十郎が平成にいれば完全にヤーさんだろう。こんな人間が借金取りに来たら絶対に視線で殺されてしまう・
そんな人間と今部屋で二人きりだ。これは死ねと言っているのだろうか。
「……あっ、そ、そういえば、起こしに来たんです、よね」
「あぁ、政宗様がそろそろ起こせとの命令でな」
政宗、一体を何処で知ったのだろうかと疑問に思っていた。
自身にも覚えは無いし、幸村から文を出したとも考えにくい。そうであるなら椿に確実に連絡はいくはずだし、小十郎もあんな手荒な真似はせず客人として招き入れていただろうに。
「あの、私の荷物は…」
「椿が眠っている部屋にある。今必要か?」
「大丈夫です全然平気です」
小十郎は人にものを尋ねるときに眉間に皺を寄せるのが癖らしい。なのでどうしても怖いヤーさんにしか見えず、それ以上の進言ができない。
未来から来たなんてことは話さなくてもここでは生きていけるだろうし、万が一の時にはあの短剣でも見せつけてやればいいだろうと思っていた。が、
「…あ、あれっ?無い、嘘」
懐を探ってみるとあの信玄からもらった短剣が見当たらなかった。どこかで落としたのだろうかとパニック状態になっていると小十郎が察したのか
「お前の懐に仕舞っていたものは全てあのでかい荷物と置いてある」
と言った。
きっと小十郎はあの家紋を見ただろう、が少なからず信玄とかかわりのある者だと勘付いたから恐らくこんな良質な部屋に入れられているのだろう。
その謎等は直接政宗に会えるのだし、聞けばいいかとは取りあえず政宗と会うことに決めた。