第1章 雨降りて想う君。
空は晴天…
だなんて、よくある冒頭の出だし。
しかしこちらの天気は生憎の土砂降り。
傘に当たる雨粒の音が周りの音を掻き消し、世界にいるのはまるで俺一人のよう…。
……ズキンッ。
不意に胸を走った痛みに顔を歪め、傘をぎゅっと強く握った俺は唇を噛み締めて足早に道を進む。
痛い…。
刺さる痛みは鈍く身体中に響き、俺の脳裏に浮かぶのはアイツの笑顔ただ一つ。
幸せそうに笑う君の隣。
その特等席は俺だけだったはずなのに…。
「くそっ…!」
いつの間にかその隣にいたのは、おしとやかな笑みを浮かべた彼女だった。