第3章 時には昔を思い出そうか
隊服をカッチリ着ると、脱衣所から出てくる。
すると、トシはすやすやとソファで眠っていた。
昨日の夜も色々あって疲れたのだろう。
うっすらとだが、目の下に隈ができている。
『トシ?』
土「ん…?」
トシの前髪をかきあげる。
大人の色香ってやつだろうか、とにかく色っぽい。
だが、垣間見える子供のような表情に、私はいつも踊らされる。
『眠い?』
土「…いや、平気だ」
立ち上がろうとするトシに、そっと抱きついた。
土「どうした?」
『…なんとなく』
子供をあやす様に背中を撫でられる。
居心地がいい。
この場から動きたくない。
『トシ』
土「ん?」
『まだここにいちゃダメ?』
土「ダメだ、帰るぞ」
仕事口調に戻る、トシ。
『…ケチ』
土「ケチで結構。…そういや、聞いてなかったな」
どうせ、どうして帰らなかったのかだろう。
だが、質問された内容に私の体は凍りついた。
土「昨日の夜、高杉といただろ」
『え…』
土「隊士の一人が見てんだよ。っつっても…刀突きつけられてたところらしいがな」
条件反射のようにトシから離れようとしたが、腰に腕を回されておりそれは出来ない。
土「どういうことだ?お前はもう、春雨とは関係ねぇんじゃなかったのか?」
『当たり前でしょ!?』
土「そうは思えねぇから聞いてんだよ!」
怒鳴られ、肩がはねる。
隊服の裾を握り締めた。
土「…信じてぇよ、お前のこと。でもなんも相談してくんねぇ、何も教えてくんねぇ…そんなんで信じろって方が無理だろ」
『そ…だね』
その通りだ。
私は大切なことをはぐらかしすぎている。
何も知らないのに、信じろ。
そんなの
最低だ。
『トシ、私歩いて帰る』
土「待て」
『放して!!』
腕を取られるが、振り払う。
『ごめんね…』