第3章 時には昔を思い出そうか
一橋喜喜はひとしきり笑うと、酸素を取り込むように大きく息を吸い込んだ。
喜「天下の舞鬼神様が…聞いてあきれるな。自分で何を言っているのか分かっているのか?そんな綺麗事がこの世のなかに通ずるとでも?」
バカにしたような声。
嘲笑うような言葉。
一橋喜喜
それが言えるのはお前だからだ。
綺麗事だと罵ることが出来るのも、お前だからだ。
『私だって分かってる。綺麗事?その通りよ』
喜「ならばなぜ…」
『私の言葉を、綺麗事だと考えている貴様にはわからないと思うが?』
一橋喜喜の言葉を遮り、冷たくいい放つ。
『大切なものを亡くしたことがないからこそ、貴様は綺麗事だと言うことが出来る。私の思っていることは皆が望むこと。誰も失いたくはない。その時に感じた想いをどこに向けるかによって全ては変わっていく』
そう、ちょうど…
『白夜叉と晋助のように…』
一人は何もかもを恨んだ。
恨んで、憎んで…
そして世界を呪った。
大切な者を奪った世界を憎み、怨み、価値を否定した。
それとは対照的に…
一人は自分の力のなさを呪った。
一度は大切な者を作らないようにと思うまで、自分を恨んだ。
だが、それがどうしても出来ずにいた。
だからこそ、護ろうと心に誓ったんだ。
『どんなに甘い戯れ言でも、信じなければ先には進めない。出来るはずがないと最初から思っていたら、出来ないに決まっている。だから私は、信じることから始めようと…そう思った』
戯れ言でもなんでもいい。
私もそう思うから。
だから信じてるんだ。
あんたの進む道は茨の道。
苦しくて、痛くて、進みたくない、進めないと思うことも多いだろう。
でも、その先には
いつものみんなの笑顔がある。
待っていてくれる人がいる。
信じてくれる人がいる。
それだけで幸せだと、私は思うんだ。
『晋助、私は銀時を信じる。アイツについていく』
神威、ごめんなさい。
でも
きっとあなたを救うから。
今まで通り、私を信じて待っていて?
『晋助、神威に伝えて?』
あなたのこと
『愛してるからって伝えて?』
不器用なあの子には
これぐらいストレートな言葉をあげないと分からない。
『待ってて』
かならず、みんなを救う。
たとえ、私の命が尽きようとも…