第3章 時には昔を思い出そうか
高「ならあのガキはどうなるんだ?」
私はその一言で引き戻された。
ガキ…
『神威…』
高「アイツはおめぇを慕ってる。誰よりも、何よりも大切に思ってんのはこっちからでも分かってんだ。瑠維おめぇが気づかないはずあるめぇよ」
気づいてる、気づいてるよ。
神威が力を求めたのは、私と出会う前から…
でも、今神威が力を求めているのは
確実に私のせい。
神威は私を越えることを目標とし、同時に私と同じ道を歩もうと考えている。
年相応の思考をあの子は持っていない。
ただ、己の欲求を素直に受け入れて、それを表しているだけ。
強者を求める理由もそれ、私を手元に置いておこうとする理由もそれ。
あの子は私の強さを愛している。
最初はそう思っていた。
だが、少しずつあの子の不器用な愛情に気づいていった。
不器用でわがままで自己中。
それは、仕方のないこと。
あの子はきっと愛情を知らないから。
もし、あの子を一人にすればどうなる?
その答えはとっくの昔に出ている。
あの子は変われない。
今のまま大人になっていく。
変えなければならない。
あの子を、元の優しい子に…
高「まあ、今は決めきれねぇだろうな。おめぇは大切な物を作りすぎてんだ」
『分かってる…でも!』
高「でも、か…それでなにか変わるんなら言い訳してろ。かわんねぇよ。おめぇが何かを捨てねぇとならねぇ。守りてぇならどっちか選べ」
どっちか?
この居心地がいい場所を選ぶか、それとも神威を選ぶか…
私は頭を横に振った。
『選べるわけ…ない。絶対に誰も死なせない!私は…私のやり方でみんなを救って見せる!』
晋助を睨み付けるようにそう答える。
そのとたん、急に乾いた笑い声が聞こえてきた。
その笑い声の主は…
一橋喜喜