第3章 時には昔を思い出そうか
夜「さて、白夜叉もまんまと手中に収まったことですし…そろそろ始めましょう」
夜右衛門の言葉に、私は顔をあげた。
今、白夜叉って言った?
高「銀時だけじゃねぇ…お前の王子様もいるぞ?」
指差されたその先には一隻の船。
それに沿うようにして並んでいるボート。
ボートに描かれている紋様は…
『トシ、総悟…』
船から身を乗り出すとはっきりと見える。
あの二人はきっとあの船中に…
グッと体を更に前に行かせようとしたその時、晋助の手が私の腕を引いた。
そのまますごい力で引き寄せられ、気づいたときには晋助の腕のなかにいた。
細身なようで実は逞しい腕。
晋助の羽織が音もなく落ちる。
晋助の虚を突いた行動に、私は抵抗することも忘れていた。
ただ、規則正しく鳴り響く心臓の音を聞いているしかなかった。
高「瑠維、俺はおめぇとは戦いたくねぇ…」
『え…?晋助?』
高「このまま銀時の所に…真選組にいるってんなら…」
言葉を濁した晋助に、私は笑顔を向ける。
『わかってる、晋助。でも、私はあの人たちの傍に居たい』
例えあなたと、刃を交えることになろうとも…
晋助の顔は、珍しく心配そうに歪んでいる。
『晋助…私さ、銀時の守ろうとしているものが知りたくてここに来たよね?』
随分と前の話だ、覚えてはいないだろう。
『私にも出来たよ…』
昔は、銀時の守ろうとしているものが知りたい。
そう思っていた。
だけど、違ったんだ。
『私にも、銀時と同じように…』
知りたい、分かった
それは違うんだ。
本当は、
『大切な人が…命をはってまで守りたい人が』
ねえ、そうでしょ?銀時
『出来たよ』
守っている?
違うんだ。
護られている、私たちは。
たくさんの人に支えられて、助けられて、護られて、私たちは生きている。
だから、私たちも護るんだ。
護って、護られて、そしてまた護って…
私には護ってくれる人がいる。
だから、護るべき人がいる。
私のことを大切にしてくれる人が出来たんだ。
だから、私も大切にしたい…