第3章 時には昔を思い出そうか
「ついてこい」
そう言われて向かった先は一隻の舟。
どうもおかしい。
『なぜ?』
その答えはこの雰囲気そして…
『ど…して…?』
目の前にいる人物。
喜「はじめまして。真選組参謀藤間瑠維君」
『なぜあなたがここ…に?』
私の名を、ゆっくりと一言一言噛み締めるように呼んだその男は、紛れもない…
『一橋喜々…』
高「おいおい…仮にもお前は幕府に遣えてんだろ?なら口の聞き方に…」
『晋助にだけは言われたくない』
そう言い切ると、私は目の前にいる男を睨み付ける。
『手を組んでるってわけね…』
やはり、現将軍である茂茂さまには…
『教えて晋助。アンタいったい何が目的?』
見廻組とも春雨とも手を組んでるっていうのに、今度は次期将軍候補まで…
まさか…
『アンタ、新時代をつくるとか…そういうガキみたいなこと思ってないでしょうね?』
晋助を見るが、顔色一つ変えない。
『神威を手中におさめたのは…春雨を利用するため…』
神威は何とも思わないだろうけど…
『ずいぶんと卑怯な手ぇつかうじゃない…』
私としてはもちろん、心中穏やかな訳がない。
あの第七師団は私が育て上げたもの。
それを他人にどうこうされるなんて…
高「今さらなんて言おうが無駄だ。ククッ…おめぇはもう帰ってくる気はねぇらしいしな」
その言葉に、私の心の傷が疼く。
ここにいたい…
でも、このままだと…
下唇をぎゅっと噛み締めていたせいか、つうっと口の端を生暖かいものが伝う。
口を開こうとした瞬間に、ガクンと船が揺れる。
どうやら、船が動き出したようだ。
どこに向かうのかはわからない。
だが、危害を加える素振りは見せないので抵抗することはしなかった。