第2章 再確認
夜「細胞すら斬られた事に気づいていない。恐らくこの者も、冥土で戸惑っていることでしょう」
二人の視線には気づかない夜右衛門は、少しだけ悲しそうな表情へと変わった。
夜「まさしく魂だけを抜き去る妙技。池田家に伝わる「抱き首」の極地「魂あらい」です」
・・・介錯の仕方に、そんなに種類があるのか?
夜「しかし、この技が使えるのは池田家でも数人しかおりません。一人は亡くなった、先代、夜右衛門。そしてもう一人は、その技を受け継いだ私」
含ませるような言い方に、トシは煙草の紫煙を吐き出しながら問うた。
土「・・・もう一人いるんだな」
トシの言葉に夜右衛門は、首を横に振る。
夜「いいえ、家中にはもうおりません」
『家中には・・・とは?』
感情の読み取れないその笑顔を、私は見つめた。
夜「出奔中の者が一人。数多の罪人の首を罪と共に斬り捨て。その技たるや、先代をも超えると美技と称され。池田家当主の証、「夜右衛門」の名を継ぐことを約束されていながら、我らが師、先代夜右衛門の首をその手にかけ、我ら一族を裏切った謀反人」
・・・長い、長すぎる。
夜「まさしく、正真正銘の死神」