第5章 Locations subject to rainbow
[晦渋混濁]1
「悪い楠木、雛森の所に行ってくっから、後頼むわ」
「はい。お気をつけて」
そう言うと冬獅郎は斬魄刀を腰に構え、十番隊を出た
桃が奈々美を拒否してから二週間が過ぎていた
あの後から結局桃の要望が現実となり、冬獅郎がいつも桃の元へ向かう代わりにその分の仕事は殆ど奈々美が引き受けている
冬獅郎がやる書類は隊長たちのみが知る極秘書類だけしかない為、奈々美は普段の倍以上もの仕事をこなさなくてはいけないのだ
「アンタ顔青いわよぉ?ホラ私も手伝うから貸しなさい。奈々美まで倒れて欲しくないのよ」
今まではずっとサボってきた乱菊だったが、この状況で流石にそれはできない
それに何か一つでも協力したいと思っているのだ
「大丈夫ですよ乱菊さん。これは自分で言った事です。乱菊さんの手をわずらわせる様な真似は致しませんから。それに私ちゃんと寝てますし」
そう言う奈々美の顔は痩せこけていて、白い肌にくまがびっしりと貼り付いていた
とても見れた顔ではない
(私知ってんだからね。アンタがもう何日も部屋に帰らないで夜通しで机に向かってる事)
そう言ってやりたいが、またはぐらかされるだろう
『何か私にできる事はないか』
その言葉だけが乱菊を取り巻いていた