第5章 Locations subject to rainbow
[叱咤怒号]1
一護たち死神代行チームが現世に帰って行った翌日、瀞霊廷中がどんより雲に覆われていた
「あ、おはようございます日番谷隊長!今日の書類、適当に分けておきましたから」
とは言ってもやはり隊長である冬獅郎よりも三席の奈々美の方が山積みになっている書類は多い
冬獅郎も乱菊に言われてから少しは自分でやる書類を増やしたのだが、これが彼にとって限界だったのだ
どうにか出来ないものかと彼自身も悩んでいるのだが
「ああいつも悪いな。ありがとう」
言いながら冬獅郎が席に座ろうとするも奈々美からその後の会話が聞こえてこない
チラリと盗み見ると、彼女は自分を物珍しい目で見ていた
「…どうした?」
「いえっ何も。最近日番谷隊長、素直だなぁと思って」
(…出たよ、俺に対する意外発言。そんなに俺意地張ってんのかぁ?)
少し冬獅郎は自分自身の性格を悔いた
『ありがとう』さえも俺はろくに言えないのか と…
「…お前だけだよ」
「へ?」
奈々美が聞こえないのも無理はない
なんせ冬獅郎が一人ボソリと呟いたのだから
「何度も言わせんな。俺が素直になるのは楠木の前だけだ。分かったかよ」
(どうしてこの人はこんなに私の喜ばせる言葉を的確に当ててくるんだろう)
照れ笑いを堪え、奈々美は平然を装って応えた
「たまにしか出さない素直が人を動かすんですよ。その…嬉しくて」
その時、冬獅郎が思った事は
コイツまるで分かってねぇ…
またすれ違う二人の心
(私…最悪だ…)