第12章 初めて知る恐怖
朝が来た。
鳥のさえずりを目覚まし代わりに瞼を開けた私はまず思う。身体が、動かない。
『……っう…ぐ』
妙な呻き声を出して頑張ってみると、ようやく上半身を起こすことに成功した。
人類最強を背負った反動は半端じゃない。あんなの訓練じゃなくて拷問だ。
ブツブツと文句を並べ立てていると軽いノックが部屋に響いた。
「、起きてる?」
花が舞うような軽やかな声。
ペトラさんだ。
私は無意識に胸を撫で下ろしてドアへと歩を進めた。兵長だったらどうしようかと思ったのだ。
『……おはようございます』
「事情は聞いたわ…ふふ、洗礼を受けたわね」
でも、それが兵長の優しさなのよ。
そう言ってペトラさんは湿布薬と温かい紅茶を差し出してくれた。彼女の背中に天使の羽が見える。
「さん!おはよう!」
天使が淹れてくれたアーリーモーニングティーを楽しんでいると、エレンが訪ねて来た。
彼曰くペトラさんと同様に私を見舞いに来てくれたらしい。
「私達特別班はハンジ分隊長の実験には参加しないの」
「先に控えてる壁外調査の訓練があるからな」
今日の予定を訪ねると二人は交互に言葉を紡いだ。と、云う事は兵長も班の訓練に参加するのか。
再びホッとしたところで、ある不安が頭を過る。
『……私、まだ一人で馬に乗れません』
実験施設までの道のりを考えて暗い顔をする私に答えをくれたのはペトラさんだった。
「大丈夫よ。そろそろ来る頃だから」
『へ……?』
そう言って顔を上げた時、ドアを突き破って入って来たのはハンジ分隊長だった。