第10章 閉めたがる団長
「それはそうと…リヴァイ」
おもむろに切り出した団長は兵長に歩み寄る。その次の行動に私は顎が外れそうになった。
「チャックはちゃんと閉めなければ駄目だろう。風邪を引く」
さも当たり前だと言うように兵長のチャックに手を掛けるエルヴィン団長。
一番上までしっかり上げられたジッパーに兵長は顰めっ面をする。
「チッ……どうせ脱ぐんだから良いだろうが」
暑苦しいのは嫌いなんだよ。
そう付け足して兵長は再びチャックを開けた。
しかし、負けじと団長も閉め返す。
親子か。
そんなツッコミがこみ上げたが必死で我慢した。
「何と言おうが駄目だ。大体、お前は少し開放的すぎるぞ」
団長は諭すような声音で言って、兵長の背後に回り込んだ。
その大きな両手を兵長の肩に置いて顔を寄せている。
「リヴァイ…お前には何が見える?敵は何だと思う?」
「あ……?」
意味ありげな団長の台詞に訓練場を見渡す兵長。
その目に映ったのは“ほぼ上裸”の兵長に熱視線を送る大量の兵士達。勿論、その大半が男性である。
『…男受けの良さまで人類最強』
ボソッと呟いた私は言わずもがな、兵長のアイアンクローを喰らうのであった。
第10章[閉めたがる団長]完