第9章 「来ちゃった」【R18】
巨人化実験を終えた夜のことだ。
ハンジ分隊長との会議を終えた私達は各々の部屋に戻り消灯の準備を整えていた。
『……はあ』
怪我人という事もあって二番目にお風呂に入らせてもらった私は、濡れた髪もそのままにベットに寝転んだ。
ちなみに、一番風呂は兵長にのみ与えられた特権である。
『………』
私はランプの灯りに手をかざして物思いに耽る。浮かぶのはやはりジャンの悲しげな瞳だ。
それに、去り際に聞いた一言。
“同情する位なら愛をくれよ”
これが頭から離れない。
心の底から絞り出したような声、魂の叫びに聞こえたからだ。
『…同情、だなんて…そんなつもりじゃないのに』
誰に言うでもなく独り呟く。
この世界にやって来て数日目の夜は静かに過ぎようとしていた。