第8章 実験
「どうしても話す気はねぇと…?」
ただならぬ様子で話す私達をエレンが不安気な瞳で見つめている。
紅茶を淹れてくれているのは嬉しいが、さっきから砂糖を何杯入れるつもりなんだろう。
『……はい』
私は既に5杯目の砂糖を入れ終わったエレンの手元を見つめながら返事をした。
対する兵長は得意の舌打ちをした後、深い溜息を吐く。
「…いいだろう、お前の判断を信じてやる」
『感謝致します…』
「だが今回だけだ。また怪我を負うような事があれば…その時は拷問してでも犯人を聞き出すからな」
それがお前の為であり、兵団の為になる。兵長はそう言って部屋を出て行った。
部屋に残された私とエレンは呆然とその背中を見送る。
「さん…兵長に大事にされてるな」
『エレン程じゃないよ、ははh』
「そうだねそれは間違いない。絶対俺の方が兵長に愛されてる自信がある」
『………』
ハンジ分隊長の部下が声を掛けに来るまでの間、エレンの愛され自慢は延々と続いたのであった。
第8章[実験]完