第8章 実験
「命令だ…何とかしろ」
開けた草原のど真ん中、兵長の怒りを含んだ声が響く。
「はい…」
エレンは俯き加減に呟いた。
少年らしい滑らかな肌には冷や汗が滲んでいる。
それも無理はなかった。
エレンの巨人化実験は失敗に終わり、目的の成果を得ることが出来なかったのだ。
『実験失敗…か』
私は木陰でバインダーを抱きながら空を見上げる。
遠くの方で、兵長を宥めるペトラさんの声が聞こえていた。
「!温かい紅茶が入ったぞ、一緒に飲め!」
風景画でも描くかとペンを握ったところでオルオが呼んでくれた。ひとりで居たのを不憫に思ったのだろうか。
やっぱり何だかんだ良い人だ、男色家だけど。
私はリヴァイ班の待つテーブルへと歩を進める。その心はとても穏やかだった。