第7章 意外とお上手な兵長
ジャンとの一件の後、急ぎ足で蹄洗場に向かった私は兵長にコッテリと絞られた。
「次、俺を待たせてみろ…死ぬまで走り込みさせるぞ」
『ご…ご冗談を、はは』
「本気だ。脂肪が付き過ぎなんだよお前…もう少し鍛えろ」
その言葉を聞いてなんとなくジャンを思い出す。彼の寂しげな瞳はしばらく頭から離れそうに無い。
それにしても「脂肪が付き過ぎ」は酷いんじゃないのか。
「…ほら、とっとと乗れ」
目を伏せてそんな事を考えていると兵長に頭を小突かれた。
軽くやったつもりなのかな。
ドスッて音がしたんだけど、凄く痛かったんだけど。
痛む後頭部をさすりつつ馬に跨ると、既に出立の準備を整えていたエレンと目が合った。
「筋トレするなら付き合うぜ」
キラリと光る笑顔。
なんとも純粋無垢な少年だ。
これから行われる実験を見て、私は何を感じるのだろうか。
『お手柔らk』
「取り敢えずスクワット1000回な!」
『………』