第6章 同情と愛情【R18】
私の返答を見たジャンは自嘲気味に口元を歪めた。
「はは…だよな。ゴメンゴメン」
何でそんなに悲しそうな顔をするの。
ベタな台詞が喉まで出かかって、必死で抑えつける。
その時だった。
「さーん!兵長が先に馬出すって、痺れ切らしてますよーっ‼︎」
少し空いたトイレの窓からエレンの声が飛び込んで来たのだ。
この建物の直ぐ側に蹄洗場があるので其処から叫んでいるんだろう。
「ああ…そういやアイツ、今日は実験だとか言ってたな」
ジャンは言いながら左手をパッと放した。
やっと解放された手首には真っ赤な痕が痛々しく残っている。
『……っ』
無言でその場を去る私。
トイレから出る間際、背中に刺さった言葉の真意はいくら考えても分かりそうになかった。
「…同情する位なら愛をくれよ」
第六章[同情と愛情]完